「人との出会いは一期一会(いちごいちえ)だと思って大切に」などのかたちで使われる「一期一会」ですが、どういう意味で、どんな由来を持っているのでしょうか。
「一期一会」は「一生に一度だけの出会い、またそのような出来事」を意味する言葉です。
現在ではもっぱら四字熟語のかたちで使われていますが、元々は四字熟語ではなかったようです。
「一期一会」が初めて書かれた書物は山上宗二(やまのうえ そうじ)という茶人が書き残した「山上宗二記」です。
山上宗二は、現在の茶道の源流となった「わび茶」を完成させた千利休(せんのりきゅう)に学んでいたと思われる茶人だそうです。
この山上宗二が書いた「山上宗二記」の「茶湯者覚悟十体」という項目の中に、以下のような文章があります。
道具開き、亦は口切は云ふに及ばず、常の茶湯なりとも、露地へ入るより出づるまで、一期に一度の会のやうに、亭主を敬ひ畏るべし。
(道具を開き、また新茶を提供するときはもちろん、通常の茶湯であっても茶室のある敷地へ入ってから出るまで、一期に一度の会のように亭主を敬い、もてなしを受けなさい)
この「一期に一度の会のやうに」という部分が現在の「一期一会」のもとになった表現だそうです。
ちなみに、「一期」というのは仏教用語で「一生」を意味します。
では、いったいいつから、現在のように四字熟語として使われるようになったのでしょうか。
これは江戸時代の大老・井伊直弼が「茶湯一会集」という本で使ったことで広まったようです。
「一会」というのも仏教用語で、法要などの一つの集まりのことです。
したがって江戸時代から、茶道で「一期一会」が使われるようになったようです。
現在では、意味が広がって茶道とは関係ない場面でも使われています。
千利休が生きていたのは500年近く前ですが、そんな前から一つの言葉が脈々と受け継がれて使われてきたというのは、驚きですね。