日本語って、いつから使われているの?

私たちが普段何気なく使っている「日本語」は、いったいいつから使われているのでしょうか。

日本語って何?

日本語がいつから使われているのかを考えるには、そもそも日本語とは何なのかを考える必要があります。

しかし、この日本語とは何かという問いに答えを出すのは、非常に難しいようです。

例えば日本語を日本列島に住んでいる人が話す言葉と定義するならば、日本列島に人が入ってきた時点から日本語が使われていたと言えてしまうからです。

それがどんな言葉であったとしてもです。

これはどの言語でも同じですが、言語には明確な「かたち」がありません。言語は日々変化しています。日本語も戦後に限ったとしても、「ら抜き言葉」や「やばい」という言葉の意味の拡大など日々変化を続けています。

そのため、日本語とは何かという問題はとても難しいのです。

日本語の場合、漢字が入ってくる以前には文字が無かったとされています。

一部では「神代文字」(しんだい/かみよもじ)と言われる日本独自の文字があったとする話もありますが、科学的な実証はされていないので、ほぼ確実に日本語として文字を使い始めたと言えるのは5世紀以降(6世紀という説も)です。

文字が残っていないと私たちは当時の言葉を推測できないので、漢字を使い始める前の日本に住んでいた人々がどのような言葉を話していたのかを知ることは、ほぼ不可能に近いのです。

ですが、文字さえあればある程度言葉を再現できるので、そこからであれば歴史を考えることが可能です。

そこで、今回はほぼ確実にどのような言葉を話していたことが分かる時点を「日本語の出発点」の手がかりとして考えてみることにします。

 

 

日本で最も古い文字記録

日本国内で見つかっており、学術的にも認められている最も古い文字記録としては、稲荷山古墳出土鉄剣(金錯銘鉄剣/きんさくめいてっけん)というものに刻まれている文字です。

これは漢文を使いながら、日本語の固有名詞(人名)の部分は一種の当て字をしています。この当て字を「万葉仮名(まんようがな)」と言います。

このような当て字を使って言葉を表現する方法は、漢字を使う地域ではよく見られる手法です。例えば、この鉄剣では「タカリ」という人物を「多加利」と書いています。これはおそらく当て字です。

日本には文字が無かったので、漢文では表せない日本語独自の部分は漢字を当てはめて書くしかなかったのだと思われます。これは逆に言うと、万葉仮名が当時の日本語の発音を示しているということなので、「日本語の出発点」とも言えるわけです。

この万葉仮名をもとにして、現在の「ひらがな」「カタカナ」ができているようです。

この鉄剣は471年(異説もある)のことと考えられる年号が出てくるので、5世紀末には万葉仮名で日本語を表記するようになっていたと考える根拠になっています。

では、もっとさかのぼることはできるのでしょうか。

 

魏志倭人伝に出てくる邪馬台国の言葉

魏志倭人伝」は歴史で習う非常に有名な中国の史書です。

ここでは2世紀ごろから倭(古代の日本)にあった邪馬台国(ヤマタイ国)に中国の使者が訪れたときの話が書かれています。

この史書では、邪馬台国やその周囲の国名、人名、官職名が書かれています。

これは邪馬台国の人間が中国人に話した日本語を書いているので、当時の日本語ということになります(ただし、そう聞こえたものを書いているのでその通りの発音だったかは不明です)。

例えば「邪馬台国」(ヤマタイコク)という言葉自体、固有名詞なのでおそらく日本語です。それを漢字に当てはめて記述していると考えられます。

なお、推測に過ぎませんが、この「ヤマタイ」という言い方は「ヤマト」を聞き間違えたのではないかとする説もあります。

「ヤマト」という言葉は今でも使いますので、現代日本語とのつながりを感じさせる部分があります。ただ、当時の発音は音声があるわけでもないので、正確には分かりません。

「魏志倭人伝」には色々な日本語が出てきますが、これらの言葉は奈良時代以降に使われていた上代日本語と呼ばれるものと特徴がよく似ているという説があります。

 

 

邪馬台国の言語は日本語か?

ここまでの話から、邪馬台国で話されていた言葉は上代日本語につながっている可能性があります。この上代日本語は中古、中世、近世と経て現代日本語につながっています。

したがって、文字というかたちで分かるほぼ確実に話されていた日本列島内の言葉は邪馬台国の言葉であり、その言葉は現在の日本語の流れからは外れていない可能性があるので、日本語は邪馬台国の卑弥呼(ヒミコ)の時代には使われていた、とも考えられるのです。

もう少し分かりやすく言えば、2世紀末には使われていたことになるので、大雑把に言うと約1,800年前からは使われていたと言えるかもしれません。

ただし、邪馬台国の言葉が上代日本語につながっているという説が完璧ということでもありません。

今の日本語とのつながりが見出しにくいものもそれなりの数で含まれているため、日本語とは別の言語と考えることも可能です。もし、邪馬台国の言葉が現代につながる日本語とは距離があると考えると、ここまで考えてきた説は否定されます。

 

日本語はいつから使われていたか?

この分野の研究はまだ途上で、多くの説があるものの決定的なものがないのが実情です。

その中で、文字として残っている最古の日本語を「日本語の出発点」とする立場で考えると、前述の2つの説をあげることができます。

  1. 2世紀末(弥生時代。約1,800年前)から使われていた
  2. 5世紀末(古墳時代。約1,500年前)から使われていた

ですが、2.の根拠となる鉄剣の文字も文章ではなく名詞に過ぎないため、このころの日本語の文法などが上代日本語と同じだったのかと聞かれると「よく分からない」としか言いようがありません。

文法の視点で確実に現代日本語につながる上代日本語を使用していると言えるのは、「古事記」や「日本書紀」「万葉集」になってくるので7世紀後半(飛鳥時代。約1,300年前)となります。

ここから一応の結論として言えるのは、

日本語は遅くとも1,300年前から使われており、1,800~1,500年前の時点でも使われていたかもしれない、ということです。

今後、研究が進んで、より日本語の歴史が明らかになったら面白いですね。