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日本語って、どこから来たの?

日本語にはいくつか謎と言えるものがありますが、その代表格ともいえるのが「日本語の起源」、つまり「日本語はどこから来たのか」という謎です。ここではそれについて考えてみます。

日本語は3種類の組み合わせ

日本で生まれ育った人はたいてい日本語を1種類しかないと考えていて、自分たちの話す言葉はすべて日本語であると言うようです。

でもこれは、厳密には少し違います。

正確に考えると日本語は

  • 和語
  • 漢語(もとは古い時期の中国語)
  • カタカナ語(もとは西洋の言語が多い)

の大きく3つを組み合わせて使われている言語だそうです。

つまり、日本語を話す人は外国由来の言葉を数多く使っているということです。

これらの外の言語は導入時期が異なっていて、導入されるたびに日本語の表現の幅を大きく広げてきたようです。

漢語はかなり昔、邪馬台国の時代よりさらにさかぼった時期には日本に入ってきていたと思われます。カタカナ語は16世紀に入って、日本がヨーロッパの国と接するようになってから入ってきたようです。

しかし、これらの語もあくまで「日本語のルール」にのっとって使われます。

この場合の「日本語」は漢語が入る前から使われている和語のことを指します。外国語が入ってきたからと言って、何もかも外国語にとってかわられることは、自然には起こりません。

例えば、「プレー」(Play)は英語ではそのままで動詞ですが、日本語ではさらに「する」という動詞をつけて、「プレーする」と言います。これは漢語に「する」をつけて動詞にするという日本語のルールにのっとった発明を応用したものです。

ゆえに、日本語はどこから来たのかという謎を考えるには、和語はどこから来たのかを考える必要があるということです。

そこで、和語はどこから来たのかについて考えてみましょう。

 

 

日本語は何語族?

世界史などを勉強すると、語族という枠組みが出てきます。これはもとは同じ言語だったものが、変化して分かれたものを、元々の言語(祖語)で分類する方法のことを言います。

例えば、英語は「インド=ヨーロッパ語族」と呼ばれる語族になります。これはインドからヨーロッパで話されていたであろう言語から分かれた言語が所属します。

英語のほかにも、フランス語やドイツ語、ロシア語、ペルシャ語などもこれに属します。これらは文法や語彙(ごい/単語のまとまり)が似ているので、もとは同じ言葉だったのだろうと考えられているそうです。

では、日本語は何に属するのでしょうか。

結論から言うと、「不明」です。

語族だと判断するには、少なくとも以下のことが必要です。

  • 文法が似ていること
  • 日常的な言葉が似ていること
  • 発音が似ていること

言葉というのはたくさんあるので、一つや二つぐらい偶然似ていることもあり得ます。そのため、「偶然とは言えない可能性が高い」とまで言えなければ、「似ている言語」とは言えません。

しかし、いまだにそれらの基準を満たすだけの「似ている言語」は見つかっておらず、結果的にどの語族に属するか不明なので、日本語は「孤立した言語」と呼ばれます(唯一、沖縄の琉球語(琉球方言)は日本語と密接な関係があるとされています)。

語族でこの謎を解明できないのなら、日本に住み始めた人は元々どこの人なのか、という視点でもこの謎を考えてみましょう。

その人たちが持っていた言語が今の日本語のもとになっている可能性があるからです。

 

日本人はどこから来たのか?

日本人はどこからやってきたのかについても様々な説があり、定説と言えるようなものはまだ存在していませんが、遺伝子での研究が進むようになり、新たな説も唱えられるようになってきているようです。

今の日本人は、大きく2つのグループの祖先を持っているとされています。

  • 弥生系
  • 縄文系

縄文系は縄文時代に主に活動していた人々で、古い時期に日本に来た人たちです。

弥生系は、縄文時代の終わりごろに朝鮮半島や中国の南部からやってきたいわゆる「渡来人」で、彼らが稲作の技術などを日本に伝えたとされています。漢語などの本格的な導入もおそらくこの辺りから始まったものと思われます。

元々の日本語という意味では、縄文人が重要なのですが、これも詳細は「諸説あるが不明」というのが現状の研究状態です。

また、旧石器時代(縄文よりさらに昔)にいた人々と縄文人との関連もはっきりしていません。

ただ、まとめて一つのルートからやってきたわけではなく、複数のルートから何度も入ってきている可能性は高いと思われます。

結局、日本列島に来た人々がどういう人かという視点でも、様々な人がいたという結論程度しか言えないので、日本語の起源の謎に迫ることはできません。

 

 

歴史的に考えられるシナリオ

なぜ、日本語の起源がこんなに謎に包まれているのかというのは、おそらく日本の位置が関係しています。

日本列島はユーラシア大陸の東の端にあります。

そのため、日本を経由してさらに東へ向かうことは古代には非常に難しかったと思われます。古代に太平洋を渡った人たちがたくさんいたとは考えにくいですよね。

日本に入ってくるルートとしては大まかに北(中国北部・ロシア経由)、東(朝鮮半島経由)、南(中国南部・台湾周辺経由)があって、そこから入ってきた人々は日本列島に留まるケースが多かったと想像されます。

結果的に、日本列島には異なる言語を持つ集団が複数存在することになり、それらの集団が西日本でお互いに接触や侵略を繰り返すことで徐々に和語が形成されていったのではないかと考えられます。

複数の言語が混ざり、しかも文字が無いので、元々の言語を特定するのはとても難しくなります。

また、中国文明のはじっこに日本列島が存在していたがゆえに、和語が他の言語に侵略されず、どの言語とも関係が見いだせない「孤立した言語」になったのではないかと考えることが可能です。もちろんある程度の影響を受けていたとは思われますが。

なお、東日本ではどうだったのかと考えると、文化圏が西と東で異なっていたことから、東北や北海道を中心とした地域では和語ではなくアイヌ語につながる言語が形成されていたと考えられます。

北海道でかつて話されていたアイヌ語が日本語との関係が薄いとされているのは、これが理由なのかもしれません。

しかし、これらはすべて推測で、主張できるだけの根拠も弱いです。極端な理論を使わないで、自然に考えられるものに過ぎません。

結果的に日本語がどこから来たのかは、やはり今の研究では明らかにできていないということになります。

 

言語の起源は難しいが面白い

言語の起源は、文字が無い時代にさかのぼることが多いので、どの言語でもはっきり特定するのは難しいようです。

インド=ヨーロッパ語族は例外的に比較的詳細に分かっているようですが、日本語も含め、他の語族の言語では詳細が分からない場合も多いようです。

日本語はそれに輪をかけて、よく分からないようです。

一方で自分の使う言葉の始まりはどこなのかについて興味を持つことも自然なことなので、色々な説を調べてみるのもいいのではないでしょうか。

諸説の中には「これは無いのでは・・・」というのもありますし、「これはそうかもしれないなあ」と思えるものもあったりします。